商談をしている間に、AIが別のお客様3名にフォローアップメールを送信していた。見積書を作っている間に、AIが採用スカウトを10通送っていた。
これは未来の話ではなく、いま私が経験していることです。
こんにちは。CTO代行をやっている太田です。
私は普段、AIのニュースを見て驚いたり、飛びつくといったことは稀です。ここ2年ほど、AIに関する記事も書いていません。
CTO代行として、日頃から技術に触れている立場なので、魔法のような新機能も、裏側の仕掛けが大抵わかってしまうからです。同時に、実用主義の経営者でもあるため、例えば「雰囲気だけのスライド」を生成できても全く価値を感じません。
そんな中、今回は、Claudeに出てきたCoworkという新機能について発信したいと思っています。理由は、このプロダクトが、営業やマーケティング、CS、バックオフィスなど、開発以外の職種に対しても、AIによる圧倒的な生産性向上を解放するものだからです。
この記事では、技術者目線・経営者目線でも、Coworkが非常に素晴らしく、営業生産性を向上するということを、経営者やフロント職の方向けに説明したいと思います。
1. フロント職の従来のAI活用
一般に、従来のフロント職のAI活用は、大きく分けて2パターンあったと考えています。
一番わかりやすいのは、「ChatGPTに壁打ちする」「調べてもらう」といった使い方です。
しかし、いくらChatGPTで顧客をリサーチしても、実際にスライドを作るのは営業がやらなければなりません。こうした使い方では、生産性が10%くらい上がることはあっても、50%、100%上がるといったことはありません。
営業で作業までAIに実行してもらおうと思うと、AIワークフローを構築することになります。例えば、「自動で会議の文字起こしからフォローアップメールを送信する」などです。Difyやn8nなどのツールが有名です。
一方、こうしたAI活用の問題点は、特定の「AI活用リーダー」にAIワークフロー構築など負荷が集中し、スケールしづらいことです。実際に、他部署のエンジニアのリソースを消費するケースも少なくありません。
図にまとめると以下のようになります。理想が右上の象限であることは明らかです。

2. 目指すべき姿はエンジニアのAI活用
フロント職のAI活用の目指すべき姿の参考にすべく、生産性向上が著しいエンジニア領域のAI活用について見てみましょう。
PCの上だけで作業が完結しやすいエンジニアの領域においては、もともとAIに作業までさせる活用が進みやすく、Claude CodeなどAIエージェント活用が進んできました。
エンジニアの生産性が50%、100%、200%など飛躍的に上がっているのは、この右上の象限の活用が大きく進んでいるためです。

こうした状況では、働き方・AIとの付き合い方自体が大きく変わります。
エンジニアの業務では、誰か一人の人がAI活用を推進するわけではありません。逆に、思考やリサーチだけをAIに依頼して自分でコードを書くわけでもありません。
一人ひとりがAIを使い倒し、 AI作業をやらせて作業単体で数倍の速度を出しながら、さらにAIを同時並行で管理して、複数の仕事を同時並行で進めます。
3. Claude Coworkで、フロント職もエンジニアのようにAIを使い倒せる
こうしたエンジニアのようなAIとの付き合い方をフロント職に解放したのが、AIエージェントのCoworkです。
その使い方は、「特定のリーダーが特定の業務を自動化する」でも、「リサーチだけ依頼して作業は自分でやる」でもありません。
フロント職やバックオフィスの一人ひとり、全員が「AIのマネージャ」として、大量のAIを従えて同時並行で作業をさせ、何倍もの仕事を捌くことが理想です。

Coworkは、見た目上はChatGPTのようなチャットツールです。したがって、フロント職の方でも使い慣れたUIで操作できます。
しかしながら、作りはClaude Codeとほとんど同じ仕組みでできているAIエージェントであり、従来のフロント職が利用していたツールとは全く異なります。
4. Claude Coworkについて
4.1. 従来ツールの特徴
従来のAIチャットは、主にはブラウザで利用されるもので、以下のような2点の特徴がありました。
AIとのやりとりは1往復。ユーザーがチャットに依頼をすると、AIが数秒から数分考えて、回答がかえってくる
基本的にはブラウザでの実行が主流
こうしたツールでは、リサーチなどはできても、作業の完結は難しいです。例えば「契約書を作成して送付する」という仕事を考えると、PDFの様々な箇所の修正しなければなりません。実際に電子署名ツールで送る作業もあります。AIとのやりとり1往復だけで仕事を完結することは困難でしょう。
加えて、ベースになる契約書を探すにはフォルダのアクセスも必要です。電子署名ツールの操作するにはブラウザの別タブ操作も必要です。こうした操作は、ブラウザ上で利用するWebサービスでは限界があります。
4.2. AIエージェントアプリの特徴
一方で、AIエージェントツールは、PC上で動くことで多くの汎用的な作業ができるのが革命的です。Claude Coworkも、アプリとしてダウンロードしたClaude Desktop上で使えます。これにより、大量のファイルから契約書の雛形を探してきたり、ブラウザからSaaSを操作するといったことが可能です。
そして、AIエージェントでは、ユーザーからの1回の依頼に対して、数十回〜百回といった大量のAI呼び出しを行いながら処理を進めます。まず契約書を探してコピーし、次に先方所在地と代表者名をWebで探し、契約書を修正し、CRMからメールアドレスを探し、ブラウザを操作して電子署名を送る。これだけの大量のAI利用を、たった1回の依頼で行います。

AIエージェントの一番の強みは、試行錯誤による学習ができることでしょう。エンジニアにおいても、AI自体が賢くなることで少しずつ生産性は上がっていきましたが、ClineやClaude CodeといったAIエージェントコーディングツールが出たタイミングが、生産性が飛躍した潮目でした。
AI1回の呼び出しの賢さが上がることよりも、AIエージェントの持つ学習能力のほうがはるかにクリティカルでした。「資料の修正結果をレビューし、想定違いがあればそこだけやり直す」「ブラウザ操作が上手く行かなかったら、別のアプローチを試す」と、粘り強い仕事の進め方ができます。
加えて、Claude Coworkは外部連携先も豊富です。もちろんブラウザも操作できますが、Gmail、Google Calendar,HubSpot、Drive、Slackなど多くのツールとAPIベースで簡単につなぐことができ、作業を完結するうえで便利です。
5. Claude Coworkで営業生産性を高めるアイデア
ここからは、私が実際に毎日使っている具体例を2つ紹介します。いずれも、Coworkに依頼すると実際に作業が完了するものです。
AIエージェントにうまく仕事をさせるには、プロンプトや業務フローの設計が重要です。少しエンジニア的な発想が必要になりますが、Coworkと対話しながら作れるので安心してください。
5.0. 前提
Coworkを使い倒すうえで、「外部連携(Connector)」と「スキル」が重要です。
特に外部連携では、先ほど記載したGmailなどのツールに加え、Claude in Chrome(2026/3時点ではβ版ですので自己責任となります)によりブラウザが操作できるようになる点が、汎用的に作業を実現するうえで特徴的です。
また、スキルというのは業務フローを使い回すための仕組みです。例えば「Slackを全部見てCRMの更新漏れを修正する」といったスキルをCoworkで作成すると、関連する作業を依頼したときに自動的に読み込まれます。
5.1. 例1:資料請求に対してSDRとしてメール送信する
まずは基礎的な内容からご紹介します。実際のスキルのプロンプトは数百行となるため、概要の処理フローだけを記載します。
例えば以下のような処理フローで、精度の高いフォローアップメールを実際に送信することができます。
以下の順番で作業を進めること。並行作業やスキップは禁ずる。
0. ユーザーから担当者名、メアド、会社名を受け取ること
1. 自社の商材をLPやサービス資料にアクセスして理解すること
2. 対象企業と担当者について、商材をふまえてリサーチすること
3. 仮説を立てること
4. テンプレートに従ってパーソナライズされたメールを作成すること
5. そのメールをGmailを開いて作成し、送信すること
6. メールがおくれたらその旨をSlackで送信すること
従来のAIチャットツールでは1回のAI呼び出しですべての処理を実行させるため、こうした厳密な順序を守らせることはできませんでした。しかし、AIエージェントであれば、ステップごとにAIを呼ぶ(場合によっては複数回)ため、こうした順序付けを厳密に守らせ、再現性の高いアウトプットが可能です。
従来:リサーチ→仮説構築→メール作成→送信で1社あたり約15分
Cowork活用後:3社分を同時並行で依頼し、約20分で3通の送信が完了
また、メール文作成など考えて終わりではなく、実際にGmailで送信までさせたり、結果をSlackに送信させるなど、作業自体を代行させることができます。ブラウザによるSaaS操作などもできるため、作業代行の幅が広いです。
今回の処理であれば、このままのプロンプトで実行しても、Coworkから「LPはどこにありますか?」など色々と質問を受けながら、アウトプットまで行き着くでしょう。
加えて、Coworkには、先ほど説明したスキルの仕組みがあります。「こういう処理フローでスキルを作成したい」と伝えることで、Coworkにスキルのプロンプトを書いてもらうこともできます。「今やった処理を次回から質問なしで完結するようにスキルにしておいて」といった指示も可能です。
5.2. 例2:採用スカウトを送信する
ここでも、概要の処理フローだけを記載します。今回は少し高度な内容を紹介したいと思います。
採用スカウトを5件送信する。
考え方として、候補者一覧ページにアクセスし、上から見ていき、良い人にスカウトを送っていく。5名に到達したら終了する。
以下の順番で作業を進めること。並行作業やスキップは禁ずる。
0. ブラウザを操作して、次のリンクにアクセスする https://xxx/xxx
1. 以下をループする。
1.1. 進捗ファイルを踏まえて、まだ処理していない一番上にある対象候補者を特定する
1.2. 候補者について、要件.mdにある要件から採点し、70点未満であれば対象外とし、進捗ファイルに書き込み、ループし直す
1.3. 70点以上であれば、スカウトテンプレートにあるパーソナライズ部分について、職歴と求人票から親和性を見出して訴求メッセージを作成
1.4. サブエージェントで職歴とメッセージの間に矛盾がないことを、メッセージが論理的に飛躍していないことを検証
1.5. サブエージェントから改善点が返ってきている場合は修正する
1.6. ブラウザを操作してスカウトを送信する
1.7. 進捗ファイルに書き出し、ループし直す。5名に達していたらループせず終了する
2. 結果をSlackに送信する
ブラウザ操作により、画面上での情報の取得やフォーム送信など、広範な作業が進められることがわかります。
特にポイントになるのは、1.1〜1.7のループ構造です。これを上手く使うことで、AIに30分間〜1時間など、半永久的に作業をさせ続けさせ、まとめて大量の仕事を進めることができます。実際、Claude Maxの月30000円のプランなどを買うと、かなりの時間、AIに作業させ続けることができます。
また、このような半永久的な処理フローは長時間に渡るため、AIが処理できる情報量の上限に近づきやすくなります。そこで、処理の根幹に関わる進捗をファイルに書き出すなどの対策をしています。こうしたPC上のファイルの活用も、ブラウザではなくローカルPCで実行されるAIエージェントだからこそ実現できる工夫です。
なお、こうして処理フロー設計のために、普段やっている業務を言語化したり、エージェントの動きを意識して対策を打っていくプロセスは、究極的にはエンジニアの設計業務に近い内容です。
幸い、Coworkと対話してスキルを作成することで、Coworkのほうからスキルのプロンプトに落とすうえで「こういう処理順序でどうですか?」など提案してくれます。そうして慣れていく他、詰まったら社内のエンジニアに相談してみてもいいかもしれません。
注意点として、スカウト送信など採用などに活用する際は、個人情報の取り扱いについて活用範囲を定めると良いと思います。経歴以外匿名のスカウトプラットフォームなどであればOKという整理もありえると思います。
6. AIエージェントの強みは作業の同時並行
上記の例で、なんとなくClaude Coworkがどういった仕事に使えるか、イメージが湧いてきたことかと思います。
ここで誤解してはいけないのは、AIエージェントを使い倒す価値は「AIがやるほうが速いから」ではありません。
AIエージェントの本質は"速さ"ではなく"並列性"にあります。
例えば、先ほどのスカウト送信の例では、人力の場合、プロフィール確認→要件マッチング→文面作成→送信で1時間で8通くらいは送れますが、Coworkに任せると、品質重視の私のスキルだと1時間で6通程度です。これだけを見ると、速くなっているかは微妙です。
一方で、この仕事をAIに作業までまるっと任せられるということは、自分は他の仕事を並行で進められるということです。しかも、並列数に制限はありません。
商談の裏で、AIを3並列で動かせば、AIにスカウトを6通送信させ、フォローアップメールを3件送信させ、見積書を2件作成させるといった形で、生産性4倍も実現可能ということです。
これがフロント職のメンバー1人1人が「AIのマネージャ」になる、ということの意味です。AIに任せられるように仕事の仕方とスキルを工夫すれば、1人で数名のチーム並の生産性を叩き出すことも夢ではありません。
まとめ
フロント職のAI活用というと、大抵「業務の自動化」が真っ先に出るアイデアのように思います。
しかし、筆者は、AIエージェントが解放された今、AI活用で自動化にこだわりすぎるのはナイーブであり、生産性向上においてはむしろ足かせになると考えています。自動化は目指さず、暴れ馬のようなAIを何体も手懐ける「AIのマネージャ」になればいい。
AIワークフローによる自動化では、特定の業務しかAIの力を借りれません。業務の平準化も必要で、構築にも手間がかかり、工数投資の回収に時間がかかります。
Claude Coworkのような汎用AIエージェントを用いれば、あらゆる業務にAIを活用できます。「ちょっとやってみて、うまくいったらスキル化する」とやれば、業務を止めず、毎日走りながら生産性を上げられます。
例えば、途中で人の手が介在したり、アウトプットが安定しないスキルもあるかもしれません。それは自動化とは呼べないでしょう。
しかし、それは本当に問題でしょうか。2回に1回しか成功しないなら、2倍並列実行すればいいだけです。あるいは、人間が細かく監視すれば成功するなら、人間はもはや作業の手を止めてAIだけ見ておき、代わりにAIを3並列で実行すれば、3倍の生産性を出せます。
エンジニア業務も、AIが作業まで完結させるようになったことで、エンジニアがAIのマネージャのように振る舞い、非常に大きな生産性向上が社会的に生まれました。
エンジニアの間では「生産性を突き詰めると、AIのマネージャ業務が膨大で、非常に仕事の強度が高く疲れる。本当はコードを書くのが好きなのに」なんていう話もあります。
当事者にとっては深刻な話かもしれませんが、経営としては、社員一人ひとりが脳みそをフル回転させて最大のアウトプットを出している状態は、素晴らしいことです。
今、Coworkにより、フロント職にもその可能性が解放されたと、筆者は考えています。
これを皮切りに、今後AIエージェントはフロント職やコーポレート職にどんどん解放されていくのだと思います。ぜひ、AIを泥臭く使い倒して、営業生産性向上に向き合ってみてください!

Reminus(レミナス)について
Reminusはスタートアップに特化したCTO代行サービスを提供しています。
製品ロードマップの策定や開発統括、技術判断、エンジニア採用まで、技術領域を丸ごと伴走サポートします。加えて、本記事にあるような、Go to Market組織のAI活用や組織設計なども、サポートできます。
「CTOがいないことが事業の前進を妨げ、機会損失を生んでいる」——こうした課題をお持ちの経営者の方は、ぜひ一度お話しさせてください。



