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CTO代行がClaude Codeで経営判断ツールを自作 ── 開発リソースはプロダクトに集中させる

CTO代行がClaude Codeで経営判断ツールを自作 ── 開発リソースはプロダクトに集中させる

はじめに

はじめまして! ReminusのJackです!
ReminusはCTO代行として、スタートアップや新規事業の技術と経営の間に立ってサポートをしています。

CTO代行のサポートは、プロダクト開発だけではありません。経営判断に必要なツールやデータ基盤を整えることも大きな役割です。ただ、そのたびに開発チームの工数を使うわけにはいかない。開発リソースはプロダクトに集中させるべきで、経営サポートのためのツールは、できれば自分でサッと作りたい。

AIコーディングツールの進化で、それが現実になりました。この記事では、SaaS事業のP&Lシミュレーターを題材に、CTO代行の実務の中でAIをどう使って経営判断ツールを作っているかを共有します。


AIに「何を作らせるか」が8割

AIコーディングツール(今回はClaude Codeを使用)に「P&Lシミュレーター作って」と投げても、使えるものは出てきません。出てくるのは、それっぽいけど自分の業務には合わないツールです。

大事なのは、AIに実装を任せる前に、自分が何を求めているかを明確にすることです。

今回のP&Lシミュレーターでいえば、このように問いを先に整理しました。

  • SaaSのリカーリングモデルに特化した構造にすべきか、汎用的にすべきか

  • 人件費は「合計いくら」で十分か、ポジション別・開始月別に管理すべきか

  • 見たいKPIは何か(MRR、契約社数、営業利益の推移...)

  • 誰がどう使うか(自分だけか、チームで共有するか)

上記について、AIも一緒に考えてはくれますが、事業を理解している人間が意思を持って決めることです。AIが得意なのはその設計を高速にコードに変換する部分。設計が曖昧なまま投げると修正の往復で結局時間がかかります。


なぜExcelではなくHTMLで作るのか

「シミュレーターならExcelでよくない?」と思うかもしれません。が、運用していくうちに辛くなってくることはあるあるだと思います。

Excelの辛さ:

  • セル参照が複雑になると壊れやすい。#REF!エラーとの戦い

  • パラメータを変えたいだけなのに、どのセルをいじればいいか分からなくなる

  • 「このシートの最新版どれ?」問題

  • 複数シナリオを比較するとき、シートをコピーして手作業で差分確認

HTMLにして解決したこと:

  • パラメータは左サイドバーに集約。何をいじればいいか一目で分かる

  • 計算ロジックはJavaScriptで明示的に書かれている。壊れにくいし、壊れても原因が追える

  • ブラウザで開くだけで使える。インストール不要

  • JSONでパラメータを出力・インポートできるので、シナリオの保存・切替・Git管理が可能

以前なら「HTMLで業務ツールを作る」には修正に時間がかかっていました。Claude Codeがあれば、Excelの関数を組めるレベルのロジック理解で、そのままHTMLツールに変換できます。


実践: P&Lシミュレーターを作る

ここからは、実際に作ったものを紹介します。プロンプトを書いてHTMLファイル2枚が生成されるまで約5分でした。

作るものの設計

なぜP&Lか: 最近、既存事業の強みを活かしてSaaSに挑戦される企業や、自己資金でSaaSを立ち上げる方からの相談が増えてきました。VCからの資金調達なら事業計画は必須ですが、こうしたケースでは「どこまで作り込むべきか」で悩む方が多い。まず一番基本のP&L(損益計算書)から手を動かすのが効率的です。

売上がある状態のP&Lは「記録」ですが、売上がない状態のP&Lは「設計図」です。月額いくらで何社に売れば成立するのか、今のチーム規模でざっくり何ヶ月持つのか。こうした問いに数字で答えるためのツールとして設計しました。

BS(貸借対照表)やCF(キャッシュフロー計算書)も重要ですが、まずP&Lで事業の骨格──何を売って、何にいくらかかって、利益はどうなるか──を固めるのが実務的には効率的です。

P&L構造の定義:

項目	内容
売上高	リカーリング売上 + 初期導入売上
売上原価	開発人件費 + サーバー費用 + その他
売上総利益	売上高 − 売上原価
販管費	正社員人件費 + 業務委託費 + 広告宣伝費 + 家賃 + その他
営業利益	売上総利益 − 販管費

必要な機能の洗い出し:

  • SaaSリカーリングモデル(新規獲得→継続課金、解約率反映)

  • 人件費のポジション別・期間別管理(正社員/業務委託)

  • 月次・四半期・年度の切替表示

  • KPIカード(年度売上、営業利益、契約社数、MRR)

  • チャート(売上推移、顧客数推移)

  • JSONでのパラメータ保存・読込

こうした設計をプロンプトに落とし込んでAIに渡します。「何を作るか」が明確なら、AIは正確にコードを生成してくれます。

ページ1: P&Lシミュレーター

左サイドバーでパラメータを設定すると、右側にP&Lテーブル・チャート・KPIカードがリアルタイムに描画されます。

  • 月額単価(ARPU)、初期導入費用、新規獲得数、解約率を入力 → 24ヶ月分のP&Lが自動生成

  • 新規獲得数は月ごとに個別オーバーライド可能

  • 人件費はポジション別に開始月・終了月を設定できる

ページ2: 人件費シミュレーション

正社員と業務委託を分けて管理し、チームの全体像を可視化するページです。

  • コストサマリー: 確定分と予定込みのコストを分けて表示

  • チーム体制図: PM→開発チームの階層構造を可視化(正社員=青、業務委託=黄、予定=点線)

  • テーブル: ポジション・役割・月額・人数・予定フラグを管理


JSON管理でExcelにはできないことをやる

今回のシミュレーターで一番便利だったのは、JSONでのパラメータ管理です。

シナリオ比較。 「楽観ケース」「保守ケース」「最悪ケース」をJSONファイルで保存して、ワンクリックで切り替え。Excelでシートをコピーして横に並べる作業とは別次元です。

params/
├── scenario_optimistic.json
├── scenario_base.json
└── scenario_conservative.json

Git管理
 
いつ・誰が・どのパラメータを変えたか履歴で追える。「この前提変更、妥当ですか?」とプルリクエストでレビューもできる。

チーム共有
 
リポジトリに置いておけば常に最新版。「最新のP&Lどこ?」がなくなる。


再現プロンプト

以下のプロンプトをClaude Codeに入力すれば、同様のシミュレーターを生成できます。自分の事業に合わせてカスタマイズしてみてください。

SaaS事業のP&Lシミュレーターを、外部ライブラリなしの単一HTMLファイルで作ってください。2つのHTMLファイルをヘッダーのナビゲーションで行き来できる構成にします。

ページ1: P&Lシミュレーター(index.html)

2026年4月〜2028年3月(2年間・24ヶ月)の月次P&Lをシミュレーションするツールです。

レイアウト:

左サイドバーにパラメータ入力、右メインエリアにKPIカード・チャート・テーブル

サイドバーの各セクションは折りたたみ可能

売上パラメータ:

SaaSリカーリングモデル。新規獲得 → 継続課金の構造

月額単価(ARPU)、初期導入費用、月間新規獲得数、月次解約率

新規獲得数は一括設定のほか、月次で個別にオーバーライド可能(詳細を開くと24ヶ月分の入力欄が出る)

無償提供の顧客数も別パラメータで管理(初期数 + 月次新規)

売上 = 有償顧客数 × 月額単価 + 新規獲得数 × 初期導入費用

売上原価パラメータ:

人件費: 1人あたり単価 × 人数

サーバー費用: 1顧客あたりのサーバー費用(円/月)

その他原価(円/月)

サーバー費用は有償・無償の合計顧客数に対して発生する

販管費パラメータ:

正社員: ポジション別に管理(ポジション名・月額単価・人数・開始月・終了月を個別設定)。複数追加・削除可能

業務委託: 正社員と同じ構造で管理。複数追加・削除可能

その他: 広告宣伝費、家賃、その他販管費(すべて円/月の固定値)

P&L構造:

売上高(リカーリング売上 + 初期導入売上)

売上原価(人件費 + サーバー費用 + その他)

売上総利益

販管費(正社員人件費 + 業務委託費 + 広告宣伝費 + 家賃 + その他)

営業利益

テーブル表示:

月次・四半期・年度の3つのタブで切替

円/千円/万円の単位切替

セクションヘッダー行(売上高・売上原価・販管費・KPI)は色付きで視覚的に区分

小計行・合計行はそれぞれ別の背景色

営業利益は黒字なら緑系、赤字なら赤系の背景

KPI行: 有償契約社数、無償提供社数、合計契約社数、MRR、ARPU、正社員数、業務委託数

項目名列は左固定(横スクロール時も見える)

チャート:

Canvas APIで描画(外部ライブラリ不要)

売上・コスト・営業利益の推移線グラフ

顧客数の積み上げ棒グラフ(有償=濃い青、無償=薄い青)

KPIカード:

メインエリア上部に横並びで表示

FY2026売上高、FY2027売上高、FY2026営業利益、FY2027営業利益、期末契約社数、期末MRR

パラメータのJSON入出力:

ヘッダーに「JSON出力」「JSONインポート」ボタン

JSON出力: モーダルにJSONを表示。コピーボタンとダウンロードボタン付き

JSONインポート: モーダルにテキストエリア + ファイル選択ボタン + ドラッグ&ドロップ対応。インポート後に全UIを再レンダリング

デフォルト値(サンプル):

月額単価: 500,000円、初期導入: 1,000,000円、新規獲得: 1社/月

サーバー費用: 5,000円/顧客/月

正社員: PM 1,000,000円、カスタマーサクセス 1,000,000円、SRE 1,000,000円

業務委託: バックエンドエンジニア 1,000,000円、フロントエンドエンジニア 1,000,000円、デザイナー 1,000,000円

ページ2: 人件費シミュレーション(team.html)

正社員と業務委託の人件費を可視化するツールです。

レイアウト:

上部: コストサマリー + チーム体制図

下部: 正社員テーブル(左)と業務委託テーブル(右)の2カラム

テーブル:

各行に: ポジション名、役割(セレクトボックス)、月額単価、人数、予定チェックボックス、小計(自動計算)、削除ボタン

役割の選択肢: PM, 開発, インフラ, デザイン, CS, QA, その他

「予定」にチェックを入れると、その行は薄く表示され、体制図でも点線ボーダーで区別される

行の追加・削除が可能

フッターに合計行

コストサマリー(4カード横並び):

正社員: 人数 + 月額

業務委託: 人数 + 月額

合計人数

月額人件費合計(確定分の金額と年間換算も表示)

チーム体制図:

一つの箱の中に階層構造で配置

1段目: PM(プロジェクトマネージャー)

2段目: 開発チーム(PM以外の全メンバー)

各段のラベル付き、段と段の間はコネクタ線で接続

各メンバーはカードで表示(ポジション名・月額・正社員/業務委託バッジ)

正社員は青系、業務委託は黄系の配色

「予定」のメンバーは点線ボーダー + 薄い表示

凡例: 正社員 / 業務委託 / 予定

パラメータのJSON入出力:

P&Lページと同じ仕様(出力・コピー・ダウンロード・インポート・ファイルアップロード・ドラッグ&ドロップ)

デフォルト値(サンプル):

正社員: PM 1,000,000円、カスタマーサクセス 1,000,000円、SRE 1,000,000円

業務委託: バックエンドエンジニア 1,000,000円、フロントエンドエンジニア 1,000,000円、デザイナー 1,000,000円(予定)

共通仕様

外部ライブラリ・CDNは一切使わない。HTML + CSS + JavaScript のみの単一ファイル構成

日本語UI

レスポンシブ対応(モバイルではサイドバーが上に積む)

パラメータ変更時にリアルタイムで再計算・再描画

配色はCSS変数で管理し統一感のあるデザイン

まとめ

  • 経営判断に必要なツールは、開発チームに頼まず自分で作れる時代になった。開発リソースはプロダクトに集中させるべき

  • AIコーディングツールの本質は「コードが書ける」ことではなく、「業務ロジックを言語化できれば、それがそのままツールになる」こと

  • 大事なのはプロンプトの書き方ではなく、作るものの設計。事業構造を理解している人間が設計し、AIが実装する

  • ExcelからHTMLにすることで、パラメータ管理・シナリオ比較・チーム共有が格段に楽になる


なお、本格的な事業計画を作りたいという方には、Zaimo.aiというサービスもあります。Reminusも以前開発に関わっていたサービスで、P&Lだけでなく事業計画全体を体系的に作成できます。


Reminusでは、CTO不在の企業様に向けて、CTO代行のサービスを提供しています。経営と開発現場をつなぎ、経営の意思決定に技術を持ち込みます。よければぜひサイトをご覧ください。

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