BLOG

SaaSをやるのは「テックカンパニー」ばかりじゃなくていい

SaaSをやるのは「テックカンパニー」ばかりじゃなくていい

SaaS企業と聞くと、「技術が尖っている」「先進的なブランディング」「資金調達も派手」──そんなイメージが先行しがちな気がします。

実際、SaaS事業の立ち上げを進めている経営者の方とお話ししていると、技術や体制に関する不安を抱えている方が多いです。

しかし、それはSaaSをやるための必須条件でしょうか。テックカンパニーであることが、SaaSビジネスの一番の競争優位性なのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。特にAIが開発を支える今、SaaS立ち上げの技術ハードルは下がっています。

AIによって開発スピードが価値提供の致命的障害になりづらくなった

そもそも、技術力がある組織とそうでない組織で、決定的な差が生まれるのはどこでしょうか。

セキュリティの堅牢さやプロダクト特性によっては、高度な専門性が求められることもあるでしょう。しかし、多くのSaaS事業において技術が競争力を担ってきたポイントは、やはり価値提供スピードの最大の律速要因だった「開発スピード」だと思います。

ところが今、開発スピードをめぐる制約は、AIによって大きく緩和されてきています。特に、0→1期には、立ち上げに必要な最低ラインの開発リソースが、大幅に下がりました。

  • 少人数でもMVPを短期間で作れる

  • 仕様が粗くても、高速に作り直せる。PDCAを回せる

  • ゆえに、最初から完璧に要件定義しなくても手戻りになりづらい

つまり、技術に強い会社でないことが、クリティカルな経営課題になりにくくなってきています。一定以上の技術がないと価値提供スピードが著しく損なわれる——そうした技術起因の“詰み”が起きづらくなっており、敷居が下がっています。

実際、Reminusのお客様でも、エンジニアが採用できるまでPdMの方がAIの力を借りながらMVPを作る、といった事例が出てきています。

意思決定の質が重要になってくる

とはいえ、こうも思うのではないでしょうか。「開発スピードが上がるなら、技術に強い会社の開発はさらに加速する。その差は埋まらず、結局競争で勝てないのでは」と。

実際、テックカンパニーが「MVP」という固定観念を捨て、アーリーフェーズから大量の機能をフル装備で作り切りに行く事例も散見されます。

ただ、私はこのスピード差が必ずしも致命傷になるとは考えていません。前述の通り、AIによって0→1の立ち上げが容易になった今、その先の1→10フェーズでは、開発速度と同じかそれ以上に「意思決定」がボトルネックになっていくためです。

ここでいう意思決定は、技術の領域に留まりません。どの市場を獲り、どうLTVを上げ、どの順で機能を作るか。こうした経営や販売に直結する判断が滞れば、どれほど開発速度が高くても、肝心の「作るもの」がなくなってしまいます。

加えて、事業全体の実行スピードも無視できません。プロダクトは、プライシング、マーケティングサイト、営業資料、CS、ヘルプまで密接に紐付きます。新しい機能やプロダクトを展開しようとすれば、これら組織と事業実行を走りながらアップデートし続ける必要があり、コードを書くように「右向け右」とはいきません。

ゆえに、プロダクトの意思決定をボトルネックにさせないために「判断を雑にする」という選択もできません。一度作った機能を作り直すことは、一層困難です。 上記のとおり事業全体に深く入り込んでいるうえ、既存データの移行や顧客案内などもあり、優れたテックカンパニーであっても作り直しは一筋縄にはいきません。

このように、フェーズが進めば、プロダクト開発は意思決定と事業実行のスピードに律速されます。もちろん、技術力と開発速度は、依然として強力な競争優位性です。ただ、AIの発展も相まって、技術ばかりが勝負を分ける状況ではなくなり、技術以外の強みで戦える余地が広がってきました。

業界解像度こそが競争優位性になる時代

では、AIによりボトルネックが「作れるか」ではなく、「より良い意思決定を、より大量にできるか」に移りやすくなってきた今、「技術以外の強み」とは何か。

結論は、業界へのコミットメントや原体験から生まれる“業界解像度”です。

SaaSにおいて、プロダクトの意思決定がボトルネックになる原因は、だいたい3つに集約できます。
① 課題設定を外す(どうでもいい課題を解いてしまう)
② 解き方を外す(顧客が実用的に運用できない)
③ 課題が枯渇する(優先度に自信が持てない)

そして、この3つを潰すには、結局のところ、経営者が業界に時間を投下するしかありません。生々しい現場のペインや不合理に触れる以上、「効率的に理解する」には限界があります。机上で整理した課題だけでなく、言語化しづらいニュアンスまで含めて、身体で掴む必要があります。

優れたテックカンパニーであっても、業界理解を軽視すれば、自己評価と市場評価のズレに苦しむことになります。先進的なデモを作っても「技術はすごいが現場で機能しない」「利益に繋がらない」と判断される。極論、それを受けてさらに尖ったデモを目指す泥沼にハマる可能性もあります。

ゆえに、業界解像度がすでにあることは、強力なアドバンテージです。課題のアイデアが次々に湧き、過不足ないソリューションを当て続けられれば、SaaS事業を効果的に継続成長させられます。加えて、経営者の限られた時間を業界理解に過度に割かず、社内の戦略と実行に回せる点も利点です。

特にスタートアップの場合、創業数年でシェアも知名度もなくデータも溜まっていない段階では、ソフトウェア単体の競争優位は作りにくい。どのみち、業界コミットや実行の積み上げにしか、モート(Moat)は生まれてこないのです。

SaaSをやるのは「テックカンパニー」ばかりじゃなくていい

いま、様々な企業が、自社の強みを活かしてSaaSにチャレンジできる環境になっていると感じます。

AIの普及によって、技術は“参入の必須条件”ではなくなりつつあります。もちろん最低限の品質やセキュリティは必要です。ただ、勝負が決まる場所が「作れるか」ではなく、「何を作るかを外さない意思決定」と「それを組織でやり切る実行」に移りやすくなってきました。

そして、その意思決定の材料になるのが、業界へのコミットメントです。

Reminusのお客様も、技術そのものを強みにする企業様ばかりではありません。むしろ多いのは、業界知見や販売力に強みを持ち、「業界の理解」で勝てる土台がある企業様です。スタートアップに限らず、既存事業で実績を積まれてきた企業様が、SaaSに挑戦されるケースも増えてきました。

私は、そうした企業様が技術にキャッチアップしながらSaaSに挑戦できる時代になってきたと思っています。業界の強みを起点にして、必要な技術は走りながら積み上げればいい。だから、業界に強い会社ほど、SaaSに挑戦するべきだと思います。

宣伝:Reminusは「技術で止めない」状態をつくります

Reminusは、業界の強みをプロダクトに変える過程で、技術が“躓きどころ”にならないようにするためのCTO代行を提供しています。

技術統括として、何を優先し、どう作り、どこまで品質を担保するか。意思決定から開発の推進まで、必要なところに入ります。加えて、セキュリティや障害対策といった「最低限ここは外せない」領域も含めて、技術面の不安を現実的に潰していきます。

さらに、単に技術力を補うだけでなく、お客様の組織に技術のノウハウを残すことも重視しています。プロダクト開発の進め方や役割分担、採用や体制づくりまで、SaaSを継続して伸ばすための「技術との向き合い方」を、経営者とチームに定着させます。

目指すのは、技術が理由で止まらない状態です。お客様の業界の理解という強みを起点に、意思決定と実行が回り続ける形を一緒に作りたいと思っています。

CTO不在やSaaSの課題に
お悩みの方はこちら

RELATED

その他の記事